インプラント治療は、歯が抜けて、無くなってしまった部分の骨の中に、チタン製の人工の歯根を埋め込んで、そこを土台にして、再度歯を立ち上げる治療法です。
1962年にスウェーデンのブローネマルク先生が治療を始められ、1990年代から、日本でも一般的に行われるようになりました。
インプラント治療の最大の利点は、残っている自分の歯を守れると言う点です。
歯が抜けて無くなった場合、従来は、ブリッジや義歯で対応していました。これらの治療の理屈は、無くなった部分の歯にかかっていた”負荷”を、周りの歯で補うという考え方です。
当然、治療したからといって、前よりいい状態にはならず、外の部分に”負荷”のしわ寄せがかかってきます。残っている歯の本数が少なければ少ないほど、その”負荷”に耐えきれなくなって歯が壊れていきます。(咬合崩壊といいます。)
インプラントは、無くなった部分の歯にかかる”負荷”を受け止め、周りの歯を守ってくれます。
どんな結果にも必ず原因があります。
歯を失ってしまった部分に、その原因を考えずに同じようにインプラント治療しても、また壊れてくる場合があります。
歯を無くした原因は何なのか?(虫歯なのか、歯周病なのか、かみ合わせ、歯並びが絡んでいるのか、体癖など”くせ”はないか、など様々です)まずそこから考えていきます。
原因が排除できる目安をつけたら、インプラント治療の術前検査に移っていきます。
基本的な口腔内検査を行った後、CT撮影を行います。当院では、CT撮影はクオラリハビリテーション病院に委託しております。撮影したデータを基に、インプラント専用CT画像解析ソフト”Landmark System”にてインプラント植立位置を決定します。
インプラント手術は手術の回数によって”1回法”と”2回法”に分けられます。
それぞれメリット、デメリットがあり、どちらを選択するかはケースバイケースですが、今回は2回法について説明していきます。
2回法インプラント手術は、インプラント植立手術後、切開した傷口を完全に縫合して、インプラント体と骨がしっかりと結合する(オステオインテグレーション)のを待ちます。傷口を完全にふさぐため、骨と完全に結合する間、口の中のばい菌にインプラントが汚染される可能性が低くなります。
骨が柔らかいケース、インプラントを植立する部分に骨が不足していて、骨を新しく作る場合(骨造成)によく用います。
歯肉の中で、インプラントが骨に完全に付いたら、2次手術を行い、歯の頭になる部分の基礎を取り付けていきます。このとき歯肉が薄く、歯ブラシをするとき痛みが出そうならば、歯肉の移植術も併せて行うときもあります。
歯肉が治ったら、インプラントの型を取って、その上につける最終補綴物(被せもの、差し歯)を作成していきます。
まず最初に歯の支台となる部分を作成、その後歯の頭となる部分を作成していきます。つまり最終的には、インプラント体、歯の支台部分(アバットメント)歯の冠の部分(被せもの、差し歯)と3つの構造体によってできあがります。
なぜこのような複雑な形態を取るかというと、以下のことが理由として挙げられます。
1,歯を抜くと、元々の骨の形から変化してしまうため
2,インプラント体の形態は、天然の歯根と異なるため
歯を抜くと、基本的に骨は少し元の状態よりやせます。そのため、天然の歯より少し細いインプラント体を植立します。その形の変化を、効果的に補正するために3層構造になっています。